たぴ岡文庫

今宵も語る、どこかの誰かの物語

2021-06-01から1ヶ月間の記事一覧

小説「大空」

真っ赤な太陽に見下されながら、私はただひとり、燃えるようなアスファルトに寝転がっている。自然が作り出したこの鉄板の上で、昔よく歌われていたたい焼きの気持ちになるのだ。 しかし暑い。暑くてたまらない。 首の向きを変え、右を見てみようが、左を見…

小説「永遠」

え【永遠】終わりが来ない/死を迎えても終わらない

小説「渦」

う【渦】どんなに汚いものでも飲み込み、なかったことにしてくれる

小説「色」

い【色】一人ひとつ持っているもの/美しく儚く、しかし醜いもの

小説「愛」

あ【愛】時にそれは狂気へと変わる

小説「虚無」

僕は今日「虚無という日」を生きた。 手のひらの中にも、このポケットの中にも、君の顔にも、虚無があった。何もなかったんじゃないさ。そこにはただひとつ、確かに虚無があったんだ。 ほら、君はそう言うと思った。そんなものあるわけないって言いたいんだ…

小説「幸せな悪夢」

*人間を食べる描写があります。ご注意ください。 不気味な夢を見た。気味が悪くて吐き気がする、でもその中にも大きな幸福が横たわっているような、そんな悪夢。 内容はほとんど覚えていないのに、その不快感は鮮明にこの喉に残っている。首を絞められるよ…

小説「私は」

私は何か、貴方にひとつでも残せていますか。私は何か、貴方の心に残ることをできていましたか。私は何か、貴方の記憶に刻めてますか。私は何か、貴方を傷つけてやしませんか。私は何か、貴方から奪ってはいませんか。私は、私は。 貴方のその表情、私に何を…

小説「恋する君の」

「好きな人ができた」 君は言った。 例えば、知っていても気付きたくないことがある。それは僕の気持ちの話であり、君の心の話でもある。君があの子のことを好きだと、僕は知っていた。だってあの子を見る君の熱心な瞳や、優しいその姿勢を、嫌という程たく…

小説「僕は僕で、君は君。」

僕の夢は僕のもの。君の夢は君のもの。そこには境目がハッキリと書いてあって、僕と君は全然違うものなんだよ。僕は僕だし、君は君。それは間違えちゃいけないんだ。曖昧になっちゃいけないんだよ。 でも、もし、もしもの話なんだけど。いつの日か、境界線が…

小説「エンドレスゲーム」

夢を見た。まるで世界が終わるみたいな、そんな夢。 俺はとてつもなく広い草原に一人で立っていて、周りには何もない。こんなこと有り得るのかってくらい雲ひとつない晴天。何となく転がりたくもなるような、最高の天気だった。しばらく気持ちのいい風に当た…