たぴ岡文庫

今宵も語る、どこかの誰かの物語

2021-05-01から1ヶ月間の記事一覧

小説「貴女だけが救い」

*うつ病や死を仄めかす表現がございます。ご注意ください。 あぁ、もう薬が切れてしまった。何をする気力もない。ベッドから起き上がることも、追加の薬をもらうために病院に行くこともできやしない。今受信した連絡を見ることだって、できないんだ。 今度…

小説「君を愛しているから」

君に話したいことがいくつもあるんだよ。本当は少し前から考えていたことさ。どうしても言っておきたいことなんだ。……そう、絶対にね。 僕ね、たぶん、君のことが大好きでたまらないんだと思う。だってさ、聞いてよ。あんなことがあったのに、いや、あんなこ…

小説「雨にうたれて」

「もう、君とは会えない」 そんな冷たい言葉で突き放された。私の鼓膜を震わせたのは、貴方の声なんかじゃない。ただの機械音。どうして直接言ってくれなかったの。とめどなくあふれるこの感情は、貴方に届きもしない。落ちていくだけ。私も一緒に底まで連れ…

小説「世界で一番幸せな僕」

風を感じる。何となく、生きているんだと自覚させられる。しかし、こんなタイミングでそんなことを説かれても、僕は困るばかりだ。 みんな、何をしているのかな。僕を嫌いな君たちは、何も感じたりはしないだろうな。僕の気持ちなんて少しもわからないお前た…